組子細工とは、釘などを使わずに、細い木片を組み合わせて幾何学文様を生み出す木工技術。昔から障子(しょうじ)や欄間(らんま)などの装飾として用いられてきました。
その技術を代々継承してきたのが、堀割地区の渡会建具店です。組子細工への思いとその魅力について、お話をうかがいました。
3代目 渡會利一(わたらい としかず)さん
平成5年の技能グランプリ(第12回一級技能士全国技能競技大会)で日本一に輝き、同時に労働大臣賞を受賞。平成18年には卓越技能者「現代の名工」として表彰される。さらに平成21年には黄綬褒章を受章。
4代目 渡會誠俊(わたらい まさとし)さん
建具技術の最高峰を競う全国建具展示会に出展し平成14年に上位入賞を果たす。
厳選した木材を精巧に組み上げる
組子細工とはどのように作り上げていくのでしょうか。誠俊さんがコースターを組み込む作業を見せてくれました。
まず、15センチほどの木片を組み立て、6つの正三角形からなる6角形の地組を作ります。この地組は三ツ組手(みつくで)と呼ばれる形です。
次に、三角形で仕切られた中に”葉”と呼ばれる小さなパーツをはめていきます。微妙に角度を調整しながら指先に力を加えていくと、すっと収まる瞬間がきます。
こうしてできた桜の文様は、指先でなでると凹凸なくすべすべの手触り。木片が接する部分には髪の毛1本の隙間もない、精巧なつくりです。
「父や祖父から、組子細工で一番大事なのは正確さだと教えられてきました。0.1mmズレると最終的には大きなズレが生じてしまいます。また、たとえ地組が上手くいったと思っても、実際に何か所か葉をはめ込んでみるとサイズの合わない場所が見つかることもあるんです。そうなると途中で修正はできませんから、また一から全部やり直しです。」
身近なコースターで魅力を伝える
組子細工は日本が誇る伝統文化。渡会建具店では4代にわたって技術を受け継ぎ磨きをかけてきました。しかし、技術の継承が難しい時代になったと利一さんは言います。
「住宅事情が変わって建具職人の仕事が減り、それに伴い組子細工を入れる場所もどんどん少なくなっています。全国建具組合連合会の会員数は最盛期の4分の1以下、茨城県連の会員数も44事業所まで減ってしまいました。」
そこで、『一人でも多くの市民の皆さんに、組子細工を見て興味を持ってほしい』と取り組んだのが、身近なコースターで組子細工の魅力を伝えることだそうです。
小・中学生に組子コースターを組み立ててもらう催しでは、参加した子どもたちから大変喜ばれました。
また、渡会建具店で製作した飾り組子コースターは、神栖市ふるさと納税返礼品としても全国に紹介されています。文様は伝統的な桜亀甲(さくらきっこう)と胡麻柄麻葉(ごまがらあさのは)で、調度品として飾りたくなる逸品です。
一つひとつに注がれる最高水準の職人技
二人が手掛ける組子細工は、注文を受けてから現地で採寸し、デザインを考えて作り上げる一点物。出来上がるまでに数か月かかることもあるそうです。
改めて組子細工の魅力を利一さんにお聞きしました。
「日が当たると文様が浮き出るように見え、夜に照明をつけるとシルエットが美しく、暮らしの中で多彩な表情を楽しめるのが組子細工の魅力です。」
精緻を極める技と美しい文様。
皆さんの周囲で、また訪れた先で、組子細工が施された建具を見つけたら、じっくりと眺めてみてはいかがでしょうか。
(この記事は広報かみす2024年2月1日号の「神栖ディスカバリーFile08」から抜粋・加筆・アレンジし掲載しています。)
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広報かみす2024年2月1日号
広報かみす特集「神栖ディスカバリー」