いよいよ開催が近づいてきた12年に1度の「鹿島神宮式年大祭 御船祭」。
その中で、息栖神社が担うのは神様の船団を導く「先導船」という大切な役目です。
この重要な役割にはどのような歴史的背景があるのでしょうか。
また、大祭本番に向けてどのような準備が進められているのでしょうか。
今回は、息栖神社 氏子総代会 会長の猿田さんに、先導船の歴史的な意味から準備の裏側、地域への想いまでたっぷりとお聞きしました。
Q.息栖神社は「先導船」という非常に重要な役を務めますが、この役割の持つ歴史的な意味や、東国三社の絆について教えてください。

息栖神社が先導船を務めることには、日本神話に由来する歴史的に深い意味があります。
日本書紀などの「国譲り」の神話において、鹿島・香取の神々が地上を平定する際、その道案内(水先案内)を務めたのが、息栖神社の御祭神である久那戸神(クナドノカミ)や天鳥船神(アメノトリフネノカミ)であったと伝えられています。このことから、12年に一度の御船祭においても、神様の船団を案内する「先導船」という大役を息栖神社が引き継いでいるのです。

江戸時代には「東国三社巡り」が大ブームとなり、江戸から船でこの地域を巡る文化が定着しました。東国三社は古くから強い水運と信仰の絆で結ばれており、今回の御船祭もその歴史的な繋がりを象徴する大切な神事だと感じています。

江戸時代の息栖神社と息栖河岸の賑わいを描いた鳥瞰図『鹿島志』
(神栖市歴史民俗資料館所蔵)
Q.12年に一度の大祭ということで、息栖神社全体ではおよそどれくらいの方がこの祭事に関わっているのでしょうか?また、本番に向けてどれくらい前から準備をスタートしているのですか?

息栖神社として先導船に乗るのは、私たち氏子総代の9人、総代OB数人、そして中村宮司を含めた計13人です。しかし、裏で支える関係者や息栖地区の氏子の皆さんを含めると、地区全体で本当に多くの方々が関わっています。

準備に関しては、私たちが着用する陣羽織や黒いカラス袴といった特別な装束の手配など、1~2年前から段階的にプランニングを進めてきました。鹿島神宮様との綿密な協議や総代会での打ち合わせを何度も重ね、直前期には船の装飾や当日の運行ルートの確認など、実践的な準備に追われることになります。
Q.時代が変わる中でも守り続けている伝統などはありますか?また現在何人の氏子さんに支えられ息栖神社は運営していますか?

息栖神社は現在、息栖地区(1番組~7番組および息栖原)の約530世帯の氏子の皆さんによって支えられています。過疎化などで人数は減少していますが、年齢順などで役割を引き継ぐ使命感が今も地区に根付いています。私の父親も36年前に総代を務めており、まさに親子2代でこの使命を受け継ぐ形となりました。

守り続けていることは、形や段取りだけではありません。先人や先輩方から「言葉(言霊)」として受け継がれてきた“想い”や“敬いの心”を大切にすることです。五色の幕や吹き流し、大漁旗といった船の飾り付けも、業者任せにせずに自分たちの手で丁寧に行うなど、代々受け継がれてきた作業一つひとつに誇りを持って臨んでいます。
心をこめて飾り付けをする様子
Q.船溜まりや周辺が整備されて、御船祭を迎えますが、それによって変わった点などはありますか?

神栖市による無料駐車場の整備や「息栖にぎわいテラス」の建設、船溜まりや参道周辺の環境整備には心から感謝しています。昔は神社周辺も木々がうっそうとしていて暗い印象がありましたが、綺麗に整備されたことで今では月約3万人もの参拝客が訪れる明るい神社へと生まれ変わりました。

特に船溜まり周辺は、朝の散歩でベンチに座って休憩したり、堤防から川の景観を楽しんだりする方が非常に増えました。今回の御船祭でも、綺麗に整備された船溜まりや堤防周辺が、先導船を見送る絶好のスポットとなっています。
Q.息栖神社の視点から見た、御船祭の『一番の見どころ』はどこでしょうか?

息栖神社として一番ご覧いただきたいのは、やはり「綺麗に飾り付けられた先導船の姿」です。
当日の午前6時から7時ごろ、息栖神社近くの堤防沖(鳥居・船溜まりの先)で、五色の幕や大漁旗で彩られた先導船がぐるぐると周回し、見送ってくれる皆さんへご挨拶をする予定です。陣羽織をまとった総代や宮司が乗船した、華やかでありながら身の引き締まるような先導船の勇姿を、ぜひ間近で見ていただければと思います。
Q.神栖市にお住まいの若い世代や、新しく移住してきた方に向けて、この12年に1度の神事をどのように感じてほしいですか?

若い世代の方や新しく神栖市に来られた方には、「自分たちが住んでいる街には、こんなにも素晴らしい歴史と伝統があるんだ」ということを知っていただき、思い出として心に刻んでほしいと願っています。
安全基準の厳格化に伴い、昔のように一般の方を船に乗せることは叶いませんが、沿道や堤防から手を振っていただけるだけで、汗を流しながら船を出す私たちにとって大きな励みになります。「自分もこの伝統的な地域の一員なんだ」という誇りを少しでも持っていただけたら本当に嬉しいですね。
Q.伝統を守り、次の世代へ繋いでいくことへの想いや、これからの息栖神社が地域で果たす役割についてお聞かせください。

時代の変化とともに伝統行事への関心が薄れがちですが、この歴史ある神事を絶やすわけにはいきません。完璧にやること以上に、「先人からの想いを途切れさせずに次の世代へ引き継いでいくこと」自体が私たちの課せられた使命だと思っています。

息栖神社は、皆さんがいつも気持ちよくお参りでき、心安らぐ場所であり続けたいと考えています。12年に1度の大祭を一つの契機として、これからも氏子の皆さん、そして地域の皆さんと一緒に、この大切な歴史と拠点を未来へ守り繋いで行きたいと思います。
※御船祭の進行表など詳細は鹿島神宮公式サイトをご確認ください。











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