サーフスポットとして知られる神栖の海。
波崎地域には、約50年前にサーフィンを始め、約40年にわたりサーフボードをつくり続けてきたレジェンドがいます。
今回はサーフボードづくりを通して、神栖の海とサーフィンの奥深い世界に迫ります。
サーフィンが根付いたまち

波崎海岸
神栖市の夏といえば、白い砂浜と青い海。
夏の海水浴シーズンが過ぎても、まだまだ楽しめるマリンスポーツがサーフィンです。
サーフスポットとして人気の波崎海岸や日川浜海岸は、遠浅で水がきれいなため、これからサーフィンにチャレンジしようとする人にもおすすめです。
地元の皆さんにとっては、波乗りに熱中するサーファーや、サーフボードを積んで行き交う車なども、見慣れた風景となっているのではないでしょうか。

サーフィン体験のイベント
ところで、サーフィンが根付いているこの神栖市で、サーフボードがつくられていることをご存じですか?
今回は、約40年前に波崎地域で唯一のサーフショップ『LAP BEAT』を開業し、サーフボードをつくり続けてきた髙梨一夫さんを訪ねました。

工房でサーフボードをつくる髙梨さん
サーフショップ
工房に並ぶ道具波崎地域とサーフィンの関わりや、サーフボードづくりの話を聞くうちに、興味がどんどんふくらんでいきました。
ちなみに、下記の記事でご紹介しているプロサーファーの髙梨直人さんは、息子さんです!
サーフスポットへの歩み
髙梨さんがサーフィンと出会ったのは今から約50年前、19歳の時です。

友人がサーフィンをしているのを見て、サーフボードを借りて遊びで乗ってみたのが始まりです。
最初から面白くて、明日も来よう、また明日もと、3日連続で海に通いました。
当時はまだ、波崎海岸でサーフィンをしている人は少なかったですね。

サーフボードで波に乗る髙梨さん

その後、昭和60年に新しい波崎漁港ができると、サーフポイントは少し北寄りに移りました。
しばらくして『波崎南風サーフィンクラブ』ができて、大会が開催されるようになり、サーファーの数が増えていきました。
波崎海岸では、約40年前に波崎町長杯が開催されたことを皮切りに、神栖市長杯、日本サーフィン連盟茨城波崎支部主催の『茨城波崎SURFING GAMES』と受け継がれ、多いときは全国から約200人のアマチュア選手が集まり、サーフスポットとしての知名度が高まりました。

茨城波崎SURFING GAMES
下記の記事でも、『茨城波崎SURFING GAMES』について紹介しています。
髙梨さんも友人に誘われて大会に出場し始めます。
やがて全日本選手権にも出場するようになり、優勝の常連として活躍。年齢を重ねてからも実力を発揮し、 “レジェンド”と呼ばれるほどその名を広く知られる存在となっています。
自分に合うサーフボードをほぼ独学で試行錯誤
サーフボードについては、最初は既製品を購入し、やがて自分に合ったものをオーダーメイドするのが一般的だといいます。
髙梨さんは、何がきっかけで自らサーフボードをつくるようになったのでしょう?

オーダーしても思い通りのものができないので、自分でつくってみようと思ったんです。
最初は知り合いにつくり方を教わりましたが、ほとんど独学です。
つくっては海で乗ってみて、ちょっと薄かったから次は厚くしよう、幅が広かったからもう少し細くしようと、毎週でも新しい1枚をつくりたくなってしまって。
しっくりくるサーフボードができたと一瞬喜んでも、次の日になるとやっぱり違うなとか、いつまでたっても満足のいくものはつくれない。
何年やっていても、とても難しいというのが実感です。


サーフボードによって波に乗った感触はまるで違います。
ただし、どんなに良いものができてもサーフィンがうまくなるとは限りません。
筆が良くてもうまい字を書けないのと一緒ですね。
最初は自分のためだけにつくっていましたが、友人から頼まれたものを手掛けるようになり、やがて仕事として注文を受けるようになったそうです。
削る・固める・磨く 正解はない奥深い世界
サーフボードは一体どのようにしてつくられるのか、髙梨さんの工房で製作工程を見せてもらいました。
主に、削る・固める・磨くという3つの工程があるそうです。
1.削る
まず、発泡スチロールに似た素材に、自作したオリジナルの型を当ててペンで輪郭線を書きます。

その線に沿って切り出したら、プレーナー(電動カンナ)で大まかな形状を整えます。

そこから先は繊細な手作業です。

寸法を測ったりカーブの流れを目で確認したりしながら、微妙な調整を加えていきます。
“これぞ理想的な形”という正解はありません。
この削る工程がサーフボードづくりの肝となります。

次の工程へ進んだら、もう形を修正することはできません。
2.固める
形が決まったら布を巻き、その上から樹脂を塗ります。すると布に樹脂が染み込んで固まります。

サーフボードに色をつける場合は、樹脂に塗料を混ぜて塗ります。

1時間後には固まり始め、1日でほぼ固まりますが、硬化剤の量や気温によってだいぶ違います。
暑すぎると早く固まるし、寒すぎるとなかなか固まりません。
そのため、年間を通して工房の室温は15度から25度の間に保っています。
3.磨く
完全に固まったら、サンドペーパーをかけて表面を滑らかに磨き上げます。

この作業を丁寧におこなうことで、美しいサーフボードに仕上がります。
完成

1枚を仕上げるのに10日から15日かかりますが、これまでにつくった総数はなんと1000枚を超えます。
髙梨さんは69歳の今も、台風や荒天でどうしてもできない日を除いて年間300日はサーフィンをしており、自分用のサーフボードを、季節ごとに年間4枚はつくっているとのこと。
これだけ熟練の技術をもって心血を注いでも、いまだに成功と失敗は半々くらいなのだとか。
その言葉から、サーフボードづくりの難しさや奥深さが伝わってきました。
サーフィンを楽しみ、海を守る
神栖市はサーフィンを気軽に体験できる環境にあります。
今年7月に実施された、小学生から大学生までを対象にした「夏休みサーフィン体験イベント」(主催:日本サーフィン連盟茨城波崎支部 波崎南風サーフィンクラブ、後援:神栖市、市観光協会)では、未経験者でも気軽に参加できるよう、体験用のサーフボードが用意されていました。


昨年開催された「夏休みサーフィン体験イベント」。楽しそうに体験する子どもたち
下の記事でも、子どもたちが参加するサーフィン体験イベントを紹介しています。
また、『LAP BEAT』ではサーフィンスクールを実施しており、最近は40代、50代の受講者も増えているそうです。
神栖市では、美しい海を守るための活動も熱心におこなわれています。
毎年海水浴シーズンの前に市民の皆さんと協力して大規模な海岸清掃を実施しています。
さらに、日本サーフィン連盟茨城波崎支部のメンバーも長年にわたり、4月から10月まで毎月海岸清掃を続けています。
サーフィンは楽しむだけでなく、神栖の海の魅力を体感し、きれいな海を守る心を育むことにつながるようです。
太平洋から昇る朝日の美しさ、海岸沿いに風車が一直線に並ぶ姿など、神栖の海の雄大な風景が今日もサーファーたちを魅了してやみません。
一枚のサーフボードから見えてきたのは、神栖の海の魅力と、それを愛する人たちが育んできたサーフィン文化でした。
その思いは、世代という波を越え、これからも受け継がれていきます。
(この記事は広報かみす2026年8月号の「神栖ディスカバリー vol.38」から抜粋・加筆・アレンジし掲載しています。広報紙は下記リンク先よりご覧いただけます。)
こちらの記事についての動画も公開しています。ぜひご覧ください。
● カミスミカcolumn
波に乗って目標をつかもう! サーフィン検定に挑戦
皆さんはサーフィンをしたことがありますか?
これから始めようと思っている、たまに遊びで乗る、以前からやっているけれど最近は乗っていない・・・と、いろいろな方がいると思いますが、目標があればやる気が刺激されてぐんぐん上達し、夢中になれるかもしれません。
そんな方にぜひ挑戦していただきたいのが、サーフィン検定です。

サーフスポットとして知られる神栖市
波崎海岸では、毎年1回「サーフィン検定(日本サーフィン連盟主催)」が実施されます。
この検定は、初級(5級)から上級(1級)まで5段階に設定された技量にチャレンジする技術検定です。
検定では、原則1試合15分の間に6本程度波に乗ります。その演技を同連盟の公認ジャッジに客観的に評価してもらうことで、自分のサーフィンのレベルを把握することができます。
また、審査を通して見つかった課題について、公認ジャッジからアドバイスをもらうこともできるので、上達のチャンスも。
初心者は、まず検定を受けることを目指し、その先にはサーフィン大会への出場という、新たな目標が見えてくるかもしれません。





コメント